メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

ピアノ音楽の源流探索2017~フローベルガー

フローベルガ―(1616-1667) ・楽譜(ISLMP): http://imslp.org/wiki/Orgel_und_Klavierwerke_(Froberger,_Johann_Jacob) ・音源:Egarrがグローヴレーベルの録音した全集のうちvol.1と2で聴いている。 纏まった曲集として、フェルディナント3世に捧げられた…

ピアノ音楽の源流探索2017~イベリア半島の作曲家

セイシャス(1704-1742) ・楽譜:かの谷戸基岩さんの編纂によるソナタ選集が春秋社から出ていて24のソナタが収められている。 ・音源:アーニャ・アレクセイエフというピアニストが弾いた盤がMARQUISレーベルにある。 ニ短調のソナタ("80のソナタ”の27番)…

ピアノ音楽の源流探索2017~チマローザとクレメンティ

チマローザ(1749-1801) ・楽譜:関孝弘さん校訂によるソナタ全集が全音から出ている(上下2冊)。 ・音源:同じく関孝弘さんのピアノによるソナタ全集と、スグリッツィのフォルテピアノによる選集を、私は交互に聴いている。 ソナタ27番(変ロ長調)が有名…

ピアノ音楽の源流探索2017~ガルッピとパラディエス

ガルッピ(1706-1785) ・楽譜:関孝弘さんの校訂されたソナタ選集が全音から出版されている。 ・音源:ミケランジェリによるハ長調のソナタの録音(Decca)が有名。ピアノでのまとまった録音は、前述の関孝弘さんが校訂版の曲を弾いた2枚組がある。 いちば…

ピアノ音楽の源流探索2017~プラッティとペシェッティ

プラッティ(1697-1763) ・楽譜(IMSLP) ソナタ集op.1: http://imslp.org/wiki/6_Harpsichord_Sonatas_'sur_le_go%C3%BBt_italien'%2C_Op.1_(Platti%2C_Giovanni_Benedetto) ソナタ集op.4: http://imslp.org/wiki/6_Harpsichord_Sonatas%2C_Op.4_(Platti%2…

ピアノ音楽の源流探索2017~B.マルチェロとツィポリ

B.マルチェロ(1686-1739) op.3のソナタが素晴らしい。後に続くイタリア・バロックの作曲家による家庭用サイズのソナタと比べた時、B.マルチェロの作品だけは型破りで、チェンバロという枠に良くも悪くも収まりきっておらず、しかも豊かな音楽を感じる。 ・楽…

ピアノ音楽の源流探索2017~A.スカルラッティ

A.スカルラッティ(1660-1725) まるでオペラ用の音楽を縮小編曲したかのようなトッカータが面白い。 ・楽譜(IMSLP): http://imslp.org/wiki/Keyboard_Works_(Scarlatti,_Alessandro) 合計12曲のトッカータがまとまっている。 ・音源: 私が保有しているのは…

ピアノ音楽の源流探索2017~スグリッツィに敬意を表して

イタリア・バロックの鍵盤音楽にはいる前に、この鍵盤奏者に1ページを割きたい。 スグリッツィは1910年に生まれ、1994年に没したイタリアの演奏家である。ピリオド楽器の開祖レオンハルトが1928年生まれだから相当に昔の人なのだが、ピリオド楽器時代の名チ…

ピアノ音楽の源流探索2017~フレスコバルディ

フレスコバルディ(1583-1643) 恐らくバッハ以前の最大の鍵盤音楽作曲家。バッハの晩年の作風に少なからぬ影響を落としていると思われ、"西洋音楽の父"の父ブクステフーデに比肩して、"西洋音楽の父"の祖父(!)とでも称されるべき作曲家。クラシック・ピア…

ピアノ音楽の源流探索2017~スヴェーリンクとシャイト

スヴェーリンク(1562-1621) ・楽譜:Doverから鍵盤作品全集が出ている。IMSLPは便利でありがたいのだが、演奏しようとするなら、印刷する手間と整理できずに散らかるリスクを考えると、廉価で出版されているもの(DOVERや全音など)は購入してしまった方が良…

ピアノ音楽の源流探索2017~ギボンズとパーセル

ギボンズ(1583-1625) ・楽譜(IMSLP): http://imslp.org/wiki/Complete_Keyboard_Works_(Gibbons,_Orlando) ・音源:ピアニストのピエナールが、CD2枚分の作品選集を録音している(Deux-Elles)。他にホグウットの選集がある(explore、原盤はDECCAか??)。 …

ピアノ音楽の源流探索2017~はじめに

昨年末に読んでみたい楽譜を試算したところ約12000ページほどあったのだが、そのうちルネッサンス・バロック期の作曲家で現在までピアニストによって開拓されていない作曲家(バッハ、スカルラッティ、ヘンデル、ラモー、クープラン以外)の作品が、だいたい…

ピアノ音楽の源流探索2017~フィッツウィリアム・ヴァージナル曲集に登場する著名な作曲家

フィッツウィリアム・ヴァージナル曲集 ・楽譜(IMSLP):http://imslp.org/wiki/Fitzwilliam_Virginal_Book_(Various) ブル(1562/3-1628) 手元に2014年ごろにダウンロードした2冊分の作品選集があるのだが、サイトが見つからなかった。 まずchromatic pavane …

ピアノ音楽の源流探索2017~バード(1543-1623)

バード(1543-1623) (1) ネヴィル夫人の曲集 全作品がバードのもので、有名どころが非常に良くまとまっている。 ・楽譜(IMSLP): http://imslp.org/wiki/My_Ladye_Nevells_Booke_of_Virginal_Music_(Byrd,_William) ・音源:ホグウッドが全曲録音している(DE…

ピアノ音楽の源流探索2017~ルネッサンス・イタリアの諸作曲家とカベソン(1510-1566)

ルネッサンス・イタリアの鍵盤音楽 メルーロ(1533-1604)のtoccataあたりから聴き出したのだが、ルネッサンス・イタリアの鍵盤音楽をピアノで弾こうとした場合、面白いのはむしろ対位法を駆使したricercarであるという考えに取りつかれた。 最近発売された…

現代的な演奏スタイルってどんな風だろう?

最近考えることがあったので、簡単にまとめておきたい。少なくとも私が録音で聴いた限りでは、ピアニストの生年で大雑把に3つに時代分けしたい。(1) ~1920年 戦前の、多様な弾き方が百花繚乱していた世代 (2) 1920年~1955年 戦後の、原典主義的なピアニズ…

高い椅子で練習してみて2つの発見(2)

【発見その2】ポジション移動がしやすい ショパンの曲でしばしば要求されるポジション移動(op.10の練習曲でいうと1番や8番の基本音型)が、驚くほどしやすい。これは大きな発見であった。 その理由は恐らく、この椅子の高さで鍵盤に指を置いた時には、自然…

高い椅子で練習してみて2つの発見(1)

これまで、ピアノを弾くときの椅子の高さは高い位置(手首の高さが肘と同じくらい)と低い位置(手首の高さが肘より若干高い)の2通りで、3週間交代で練習していた。だが今回新たに、ロシア奏法を教えられている幾人かの先生がそろって推奨されている、かなり高…

kyushimaさんのCD聴き比べのページ

最近、ヤブウォンスキがショパンの練習曲全集の再録音を出したのを機会に、古い方の練習曲全集を買って聴いてみたところ大変見事な演奏であった。 その余りの素晴らしさに、そういえば昔、kyushimaさんと言う方が、この旧録音を大変高く評価されていたのを思…

キーシンの1987年東京ライヴ(SONY)

私はそれほど熱心なキーシンの聴き手でないのだが、よく「神童期のキーシンには現在の彼にはない魅力があった」という話を耳にするが、この15歳くらいの時のライヴ録音を聴く限り、そんな事はないと思った。 私は神童期の演奏をこれしか聴いた事が無いのだが…

グティエレスのショパン:24の前奏曲集他(Bridge)

グティエレスの名前は以前から聞いた事があったのだが、録音が大変に少ないうえにソロで弾いたものは皆無に等しい状態で、このBridgeへの2015年の録音で初めて聴いた。 一聴した感じでは、非常に特殊なありかたをするピアニストとの印象を受けた。 まずメカ…

神童ピアニストのCDデビューに思う事

最近立て続けに「牛」の字のつく神童ピアニスト、即ち牛田智大さんと牛牛さんのCDを聴く機会があったのだが、演奏の話は置いておいて、いや、演奏が素晴らしいからこそ、せめて十代後半になるまでは周囲がそっと見守ってやる事ができないものかと思うところ…

クラウスのモーツァルト:ソナタ選集(コロムビア)

クラウスのモーツァルト:ソナタ全集の旧録音でM&A盤に出会う前のこと、新星堂盤で聴いて録音に大いに不満だった私は、同じ時期(1950年頃)にVoxに録れたソナタ選集があると知って飛びついた。それがこのコロムビアによる復刻版で、ソナタK.310,331,332,576…

クラウスのモーツァルト:ソナタ全集旧録音(Music&Arts)

私が初めてクラウスの旧全集を買って聴いたのは、新星堂の復刻盤であった。 著名な録音技術者シャルランによるこの録音は、クラウスの調子が大変良いのが裏目に出て、その昨今の合理的奏法から逸脱した弾き方に起因すると思われるアタックノイズ(sfのような…

トリオ・カンパネッラによるアルベニス:イベリア(ギター三重奏版)(NAXOS)

去年の12月末から、本を読む感覚で、興味あるピアノ曲の譜読みを始めた。少しでも若さがあるうちにと、いちばん譜読みが難しそうな作品から始めたのだが、最も苦戦したのはアルベニスのラバピエスとレーガーのバッハ変奏曲であった(幾つかの現代音楽はこれ…

反田恭平さんのリスト:ピアノ作品集(日本コロムビア)

人気急騰中の反田さんによるリストの CDを、ようやく図書館で借りる事ができた(2ヶ月以上かかった)。聴いた印象は、ネットで試聴した時と大きく変わらない。楽器がきしむほどに強烈な打鍵、ピアノが悲鳴をあげる3歩手前の爆音は、まるでラザール・ベルマン…

浅田真央さんの思い出

引退会見を、感慨深く見た。 妻がフィギュアスケートが好きで、結婚してから息子が生まれるまでの間、私もつられてテレビでよく見ていた。 浅田真央さんは、原曲がピアノの曲で演技するのを、多く見た気がする。 一番思い出深いのは、ラフマニノフの前奏曲op…

三谷幸喜の「新選組!」(NHK大河ドラマ)

3月末に、春休み中の息子と妻が妻の実家に帰省することになり、私にささやかな春休みが訪れた(土日限定だが)。 そこで、来し方を振り返ってみようと思い、以前の職場に勤めていた時に住んでいた町に旅行しようと思ったのだが、予算と天気の関係で断念した…

音楽史‐古楽との出会い

新年度から土曜の朝に息子が習い事に出かけることになった。そこで、新しくできた自由時間を、古い鍵盤音楽をピアノで演奏できる可能性の探索に使う事にした。今日はこの辺の個人的な考えを書いておきたい。子供の頃、クラシック音楽の世界にピアノから入っ…

トリフォノフのリスト:練習曲集(DG)

このピアニストを初めて聴いたのは、少し前に発売されたカーネギーホールのライヴ録音のCDであったのだが、この最新作のリストのほうがずっと出来が良いと感じた。 最大の原因は、やはりスタインウェイを弾いてスタジオで録音した事だろう。先のライヴ録音(…

ヴィタリー・マルグリスのショパン:葬送ソナタ他(AUROPHON)

この奏者の事を、ユ-ラ・マルグリスのお父さんだというくらいしか知らなかったのだが、先日読んだ領家さんのブログで演奏の素晴らしさに触れられていて、聴いてみようという気になった。 そして、この廉価版CDのショパンを聴いて、完全にひき込まれてしまっ…

ふたたび「風の谷のナウシカ」について

漫画版「風の谷のナウシカ」は魅力的な作品で、その放出する磁力に、私は定期的に引き付けられている。最近また考え直す機会があって、今度は何か水脈のようなものにぶつかったので、生温かいうちに書いておきたい。 発端は、初めて「教育勅語」を読んでみた…

現代奏法のメモ書き(2)

私が大学生だった頃、ようやくネット上の情報が充実し始め、私がこれまで習っていたのは「ハイフィンガー奏法」で、もっと合理的に腕の重さを使う「重量奏法」あるいは「重力奏法」という弾き方があることを知った。 この弾き方を簡単に言うと、肩から腕まで…

現代奏法のメモ書き

先日、現代奏法のレッスンを受けてきた。 比較的高い椅子に座っていくつかの音を弾いたのだが、私のは手の使い方がおかしいという話になった。 先生がお手本で鍵盤をひょいっと弾くと、音がポーンと遠くまで飛んでいって、「こんな感じで打鍵してください」…

ヴィルサラーゼのシューベルト:ソナタD.664ほか(Live Classics)

私が指摘するまでもなく、「美しさ」には、変換(写像)によって美しさを保つものと、失われてしまうものがある。ある種の文学作品は翻訳に耐えられるだろうが、翻訳したとたんに壊れてしまう作品がある。また、ある種の絵画は縮小コピーされて美術の教科書…

音楽の手帖~ピアノとピアニスト(青土社)

"もうひとつのピアノ"の領家さんがblogで取り上げられていたこの本を読んでみた。1980年の初版なので大昔に書かれたものなのだが、一読して感じるのは、この時代は音楽評論が生きていたという事である。本書では音楽評論家と呼ばれる方々がピアニストをまな…

ピュイグ=ロジェの南ヨーロッパ音楽紀行・バロックの世界

昔、ピュイグ=ロジェのピアノ教本を立ち読みしたことがあるのだが、そこにはあまり有名でないバロック作曲家の音の少ない小品がたくさん取り上げられていて、他の教本と比較して異彩を放っていた。 ピュイグ=ロジェは、チェンバロを念頭に書かれたバロック…

「公共の福祉」に込められた思い

「公共の福祉」という言葉は(「教育勅語」という言葉共々)、ああ、そういえば受験勉強で出て来たよね~くらいにしか憶えていなかったのだが、ここ数日間、例の問題に興味をもって色々と調べたところ、そこに込められた先人の思いに気がついた。 私は「公共…

鈴木智博さんのライナーノーツ

「サバテール」という名前と、いったいどこで巡り合ったのか気になって昔の書籍を色々と見返しているうちに、ひょっとすると新星堂「アルフレッド・コルトーの遺産」シリーズの解説書ではないかと思い至った。確か何巻かの解説に、購入当時ほとんど知らなか…

ボロフスキーの1953年パリ・ライヴ(melo)

念願かなって(あるいは、ネット試聴できないCDなので清水の舞台から飛び降りるつもりで)アレクサンダー・ボロフスキー(1889-1968)を初めて聴いた。 予想だにしていなかったピアニズムが聴こえてきて、思わず笑ってしまった。 ロシアのピアニストで言えば、…

反ったMP関節を戻す筋肉

一昨日に練習をしていて気付いたのだが、私の右手は、MP関節が反り返った状態から元の伸びた指に戻す時に使う筋肉が弱い。しかもこの時に使う筋肉は、MP関節が出っ張って山をつくった状態で手の重さを支えるやり方では、あまり鍛えられないようだ。 そこで、…

サバテールのモンポウ:歌と踊り1-12番(Picap)

スペインにサバテールという名手がいるという話を、随分昔に記憶していた(手元にある「200CDピアノとピアニスト」は1996年の初版だが、南欧のピアニストというページに名前が載っている。しかし私はこの本以前にどこかでこの名に出会っていた気がする)。 …

回想の3.11

その日私は、たまたま休暇を取っていた。 午前中に区内の図書館にCDを漁りに行き、お昼にはアパートに一旦帰宅した。しかし、その日に限ってなぜか、午後に隣の区の図書館まで歩いて出かけたくなった。 地震にあったのは、国道を歩いている時だった。 地面が…

サン=サーンスの自作自演集(APR)

"The piano G&Ts"というシリーズのvol.3で、ショーンバーグの「ピアノ音楽の巨匠たち」に記載のあるサン=サーンスの1904年と1919年の自作自演を聴く事ができる。 1919年の録音時、作曲家は83歳であったはずだが、運指に加齢による衰えはおろか苦労の後さえも…

いい音ってなんだろう(村上輝久)

実はこの本に先立って、川崎市で行われた講演録+インタビューと思しき本を読んだ。内容的には結構被るところもあるのだが、おおいに楽しみながら読むことができた。 個人的に興味深かったのは、1967年のマントン音楽祭の調律を一手に引き受けてやっている様…

ガヴリリュクのブラームス:パガニーニ変奏曲他(PIANO CLASSICS)

アレクサンダー・ガヴリリュクは、彼が10代の頃にSACRAMBOWレーベルに入れた録音を聴いて以来、最も素晴らしいと思う若手ピアニストのひとりであった。鍵盤の底への衝突を避ける現代奏法をとりながらも、必要に応じて必要なだけの下部雑音を伴うフォルテを楽…

プリマコフ・イン・コンサート vol.1(Bridge)

長年抱えている疑問のひとつなのだが、ピアニストが本来持っているタッチの印象を、録音をいじることでどの程度変えられるのだろう? むかし、レオニード・クズミンがRussian Discレーベルに入れた一連の録音を聴いたところ、ラフマニノフだけが異様に硬いタ…

ヨッフェのショパン:ソナタ3番他(プロアルテムジケ)

人が"クラシック・オタク"と呼ばれるまでになるとき、先ず作曲家で聴いて、次に演奏家で聴く(そして更に、自身で演奏を試みる!?)という道を辿るらしい。 私の場合も、これは中学生頃なのだが、まずショパンの独奏曲を集め出し、その時に買った中にヨッフ…

今日の気づき

ツェルニーは、 どんなにがんばっても 決してクレイジーにはならない。 CZERNY ⇔ CRAZY

フレージャーのショパン:ピアノ作品集(TELARC)

最近疑問に思っていたことのひとつは、このTELARCレーベルにピアノソロを入れる奏者がおしなべて下部雑音の発生を禁忌するような弾き方に聴こえる事で、ひょっとしてTELARCの特殊なマイクセッティングによる可能性を考えていた。しかし、ようやくここにきて…