メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

あるピアノ愛好家が人生で出会ったもの・考えたこと

今日聴いたCD

熊本マリさんの弾く奥村一:日本民謡ピアノ曲集(DENON)

以前どこかで書いたかもしれないが、私はト音記号とへ音記号と各種音符の高さと長さが分かるという意味では楽譜が読めるのだが、聴いた事のない曲の楽譜を渡されてどんな曲か判るかどうかという意味では楽譜が読めない。 そんなわけで、大学生の頃、チェルカ…

ヴラディゲロフのシュメンop.29を聴いて考え込んでしまった

ギレリスが若い頃(1950年)に抜粋で録音したのを聴いて以来、とても気になっていた曲集だったのだが、今回ドイツのANTESというレーベルにPopovというピアニストが全曲を録音しているのを見つけて買ってみた。 しかし私は、この全曲演奏を聴きながら、"最初…

プレスラーのDGデビュー盤(2)

このアルバム中、いちばん示唆に富むのは、実はフォーレの舟歌6番である。フォーレは夜想曲と舟歌を晩年に至るまで13曲づつ書き綴ったが、夜想曲で到達した極限の世界に比して、舟歌は、例の3拍子系の舟歌拍のせいもあって、ずっと平穏な世界にとどまってい…

プレスラーのDGデビュー盤

発表会を頑張った自分へのご褒美その1:初プレスラー 本当はBISへ録音したソロデビュー盤(?)から聴いてみる予定だったのだが、blogを楽しみに読ませて貰っている&演奏動画を見てこの人は音楽があると思った某先生がこの盤を強力に推薦していて、こっちを…

パデレフスキの1937,38年HMV録音集(APR)

これまでパデレフスキの復刻盤でまとまったものと言えば、Pearlレーベルの全5枚だった。だから、APRから同曲異演が更に網羅的に復刻されたシリーズが発売されるという知らせを聞いた時、買い替えるかどうか真剣に悩んだ。そこで試しにこの最晩年の録音集を買…

ルデンコのカプースチン:ソナタ9番

譜読みするかどうか微妙な作品といえば、このソナタ9番だ。 一昨年末に譜読み計画を立てた中に入っていたカプースチンの傑作群(練習曲op.40と変奏曲とソナタ1,2,6番)がもうすぐ読み終わりそうで、追加でこのソナタを読むかどうかを、真剣に考え中である。 …

ミニョーネ夫人の弾くミニョーネ:12の街角のワルツ他(ALM Record)

ミニョーネの代表作と思しきこのワルツ集を、CDを買ってきて初めて体系的に聴いた。 ここから先、楽譜を買ってきて譜読みしてみたいか?といえば、 「ビミョーね」 と答えるしかない…。 この作品は大変難しい。私見では、楽譜をそのまま音にしただけでは音楽…

バックハウスの1955年10月録音のモーツァルト:ソナタ集

以前の記事で書いた(http://taikichan.hatenablog.com/entry/2018/01/05/230028)輸入盤をようやく入手して聴く事ができたのだが、見事にステレオ録音であった。 バックハウスの場合は、例えばギーゼキングと比べると、その芸風の違いから録音の古さは聴い…

ケンプの戦時中のベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全録音(APR 7403)

この復刻盤がもたらした最大の恩恵は、これまで漠然と"ケンプの戦前の演奏スタイル"と捉えていたものが、いくつかのソナタで30年代までの演奏と40年代の演奏を聴き比べられるようになった事だ。どちらの年代のケンプにも共通するのは、当時のドイツの指揮者…

ケンプの未完のベートーヴェン:ソナタ全集(1回目録音)

ケンプのベートーヴェン:ピアノソナタ全集では、DGへの2度の全集に先立って、戦前から戦中にかけて全集録音が試みられたが未完に終わったことが、良く知られている。この未完の全集の復刻は、私がまだ学生だった頃にフランスのDanteレーベルから出た、ソナ…

アルハンブラ宮殿のギーゼキング(rtve Musica)

新たなライヴ録音が発掘されると、既出盤と曲目がかぶっていようが、入手を検討するために必ず試聴チェックする歴史的ピアニストが二人いる。ひとりはスタジオ録音との落差が大きすぎのルービンシュタイン。もうひとりは、少しでも良い音質で聴いてみたいギ…

グールドのモーツァルト:ソナタ全集(CBS=SONY)

久々にグールドのピアノでK.545を聴いた。私も馬齢を重ねたせいか、グールドが志向していたものが、何となくわかるような気がする。1楽章を普通に読むと、まずピアノ協奏曲27番K.595の1楽章の第1主題を連想するような第1主題がピアノ(強弱記号ではなくて楽…

ロレッジャンのフレスコバルディ:トッカータ第1集(Brilliant Classics)

引き続き第1集を聴いた。 1637年に第3版が出版されたときに追加されたのはPartie cento sopra Passacagliだけだと思い違いをしていたが、実は以下の曲全てがそうである。 ・3つあるBalletto:実は曲中に登場するPassacagliでPartie cento~と同じ主題が使用さ…

ロレッジャンのフレスコバルディ:トッカータ第2集(Brilliant Classics)

曲聴きの時間がとれたため、フレスコバルディのトッカータ第2集をロレッジャンの演奏でざっと俯瞰した。〇印はピアノで弾くに値すると思った曲。 ・Toccata(5,6番のみ〇):5番と6番が書法的に1対の優れた作品(5番のほうが有名だが)。 ・6曲のCanzona(〇…

ブリッツィのツィポリ:鍵盤音楽全集(カメラータ・トウキョウ)

オルガン向けに書かれた第1集を聴きたくて何気なく購入したCDだったのだが、ブリッツィの弾くクラヴィオルガンという楽器の面白さにはまってしまった。 このクラヴィオルガンというのは、写真で見る感じでは、小型のリードオルガンの上にハープシコードを乗…

テレマンの鍵盤作品集(ロレッジャン)Briliant Classics

TWV.30:21-26のフーガ集を聴きたくて購入した。 この6曲のフーガは、フーガに続く複数の小曲から構成された組曲もしくはバロック・ソナタのような形態をしており、譜面を見た限りでは、ひょっとしてテレマンの鍵盤音楽中の最高傑作ではないか!?と直感した…

シャイトのタブラチューア・ノヴァ第3集(ラムル)MD+G

保留にしていたシャイトのタブラチューア・ノヴァ第3集を聴いた。 結論から言うと、タブラチューア・ノヴァの中で私が最もピアノで弾いてみたいのは、第3集中に数曲あるマニフィカトおよびイムヌスの第1versusである。 これら2つの楽曲は、まず第1versusで主…

キーシンの1987年東京ライヴ(SONY)

私はそれほど熱心なキーシンの聴き手でないのだが、よく「神童期のキーシンには現在の彼にはない魅力があった」という話を耳にするが、この15歳くらいの時のライヴ録音を聴く限り、そんな事はないと思った。 私は神童期の演奏をこれしか聴いた事が無いのだが…

グティエレスのショパン:24の前奏曲集他(Bridge)

グティエレスの名前は以前から聞いた事があったのだが、録音が大変に少ないうえにソロで弾いたものは皆無に等しい状態で、このBridgeへの2015年の録音で初めて聴いた。 一聴した感じでは、非常に特殊なありかたをするピアニストとの印象を受けた。 まずメカ…

クラウスのモーツァルト:ソナタ選集(コロムビア)

クラウスのモーツァルト:ソナタ全集の旧録音でM&A盤に出会う前のこと、新星堂盤で聴いて録音に大いに不満だった私は、同じ時期(1950年頃)にVoxに録れたソナタ選集があると知って飛びついた。それがこのコロムビアによる復刻版で、ソナタK.310,331,332,576…

クラウスのモーツァルト:ソナタ全集旧録音(Music&Arts)

私が初めてクラウスの旧全集を買って聴いたのは、新星堂の復刻盤であった。 著名な録音技術者シャルランによるこの録音は、クラウスの調子が大変良いのが裏目に出て、その昨今の合理的奏法から逸脱した弾き方に起因すると思われるアタックノイズ(sfのような…

トリオ・カンパネッラによるアルベニス:イベリア(ギター三重奏版)(NAXOS)

去年の12月末から、本を読む感覚で、興味あるピアノ曲の譜読みを始めた。少しでも若さがあるうちにと、いちばん譜読みが難しそうな作品から始めたのだが、最も苦戦したのはアルベニスのラバピエスとレーガーのバッハ変奏曲であった(幾つかの現代音楽はこれ…

反田恭平さんのリスト:ピアノ作品集(日本コロムビア)

人気急騰中の反田さんによるリストの CDを、ようやく図書館で借りる事ができた(2ヶ月以上かかった)。聴いた印象は、ネットで試聴した時と大きく変わらない。楽器がきしむほどに強烈な打鍵、ピアノが悲鳴をあげる3歩手前の爆音は、まるでラザール・ベルマン…

トリフォノフのリスト:練習曲集(DG)

このピアニストを初めて聴いたのは、少し前に発売されたカーネギーホールのライヴ録音のCDであったのだが、この最新作のリストのほうがずっと出来が良いと感じた。 最大の原因は、やはりスタインウェイを弾いてスタジオで録音した事だろう。先のライヴ録音(…

ヴィタリー・マルグリスのショパン:葬送ソナタ他(AUROPHON)

この奏者の事を、ユ-ラ・マルグリスのお父さんだというくらいしか知らなかったのだが、先日読んだ領家さんのブログで演奏の素晴らしさに触れられていて、聴いてみようという気になった。 そして、この廉価版CDのショパンを聴いて、完全にひき込まれてしまっ…

ヴィルサラーゼのシューベルト:ソナタD.664ほか(Live Classics)

私が指摘するまでもなく、「美しさ」には、変換(写像)によって美しさを保つものと、失われてしまうものがある。ある種の文学作品は翻訳に耐えられるだろうが、翻訳したとたんに壊れてしまう作品がある。また、ある種の絵画は縮小コピーされて美術の教科書…

ピュイグ=ロジェの南ヨーロッパ音楽紀行・バロックの世界

昔、ピュイグ=ロジェのピアノ教本を立ち読みしたことがあるのだが、そこにはあまり有名でないバロック作曲家の音の少ない小品がたくさん取り上げられていて、他の教本と比較して異彩を放っていた。 ピュイグ=ロジェは、チェンバロを念頭に書かれたバロック…

ボロフスキーの1953年パリ・ライヴ(melo)

念願かなって(あるいは、ネット試聴できないCDなので清水の舞台から飛び降りるつもりで)アレクサンダー・ボロフスキー(1889-1968)を初めて聴いた。 予想だにしていなかったピアニズムが聴こえてきて、思わず笑ってしまった。 ロシアのピアニストで言えば、…

サバテールのモンポウ:歌と踊り1-12番(Picap)

スペインにサバテールという名手がいるという話を、随分昔に記憶していた(手元にある「200CDピアノとピアニスト」は1996年の初版だが、南欧のピアニストというページに名前が載っている。しかし私はこの本以前にどこかでこの名に出会っていた気がする)。 …

サン=サーンスの自作自演集(APR)

"The piano G&Ts"というシリーズのvol.3で、ショーンバーグの「ピアノ音楽の巨匠たち」に記載のあるサン=サーンスの1904年と1919年の自作自演を聴く事ができる。 1919年の録音時、作曲家は83歳であったはずだが、運指に加齢による衰えはおろか苦労の後さえも…