メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

徒然なる日記

視奏と"位置音感"

小学校の時、クラスで一番ピアノが上手だったNちゃんは、先生に頼まれるままに合奏の伴奏を次から次へとこなしていった。一方の私は、同じく幼稚園の時からレッスンを受けていたのに、こんな事はとても出来ぬ芸当だった。 いったい何がちがっていたのか。 N…

ケンプの未完のベートーヴェン:ソナタ全集(1回目録音)

ケンプのベートーヴェン:ピアノソナタ全集では、DGへの2度の全集に先立って、戦前から戦中にかけて全集録音が試みられたが未完に終わったことが、良く知られている。この未完の全集の復刻は、私がまだ学生だった頃にフランスのDanteレーベルから出た、ソナ…

和文英訳とピアノと孫子

仕事柄、海外の技術者と英文メールでやり取りをすることが、たまにある。 英語はせいぜい学校で習った程度なので、思った事を直接英文で書き出すことができず、結局Google等の自動翻訳を頼ることが多い。 先ずは書きたい内容を日本語で翻訳に入れてみて、出…

ショパンの練習曲op.10-1をめぐる人生の3つの断片(3)

右手の指の不調が治ってきて、ピアノを楽に弾く奏法の知見を深めた私は、ようやくこの作品を、以前よりもましに弾けるようになった。 そこで私は、現在の自分が、この立ちはだかる壁をどれくらい登ったか、過去の演奏がどれくらいひどかったかを、この機会に…

ショパンの練習曲op.10-1をめぐる人生の3つの断片(2)

息子を初めてピアノの先生の所に連れて行ったとき、こんな事を話した。 "私は今でもピアノを弾いているが、子供の頃に十分なメカニックを身につける事ができなかったので、上手に弾く事ができない。息子には、音大に行かせたいとまでは思わないが、入れるく…

ショパンの練習曲op.10-1をめぐる人生の3つの断片(1)

初めて最後まで譜読みしたのは、そう、まだ20歳代半ばの頃だ。 当時、私はこの曲を毎日2時間練習したが、メカニック上の問題を抱えた右手では、どんなに頑張ってもクロイツァー版のテンポ(四分音符=104だったと思う)でボロボロになりながら弾き終えるのが…

幻のアップロード計画

目標だった10曲分の動画をついに録り終えた。苦労も大きかったのだが、楽しくて、すっかりはまってしまった。 そこで早速次のアップロード計画を練って、今度は少し脱線して、自分へのご褒美として、完全に趣味路線で行こうと思っていた。 その内容は、志を…

ピアノ教室の思い出

私が生まれた1970年代は、世に言うピアノブームの時代であった。音楽は好きだがピアノは一切弾いたことのない両親の意向で、私は幼稚園に付属のピアノ教室でレッスンを受け始めた。この教室のレッスン環境は、今思い返せばかなり劣悪だ(私の両親は、ピアノ…

大人のアマチュアがピアノの先生に望むこと~私の場合

おもしろそうなテーマだったので、便乗して少し書いてみたい。 ピアノの先生方のブログの中でも、奏法に関して相当切り込んだ信念を持たれている数人の方のものを、日ごろから拝読している。 その中のひとつにピアニスト活動とピアノの先生を並行してやられ…

電子ピアノの思い出

調べ物をしていたところ、「電子ピアノで弾くとアコースティックピアノよりも上手くきこえる」という記事に出くわし、思わず吹き出してしまった。本当だろうか!?個人的には、あの音はどうも嘘くさくて苦手だ(愛好者の皆さまスミマセン...)。 そんな私も…

ソナチネ・アルバム問題

昨日は私自身の運指能力の低さに自己嫌悪に陥っていたのだが、録ったものを今朝あらためて聴き直し、ちゃんと弾けていないだけで、悪くないと思うようになった。 ところで、全音版を見ながら弾いたものでは、スラーをいくつか取っ払ってしまっているのだが、…

パデレフスキとチャップリン

毎日更新チェックする巡回ルートに入っているブログで、書き手のkazさんがパデレフスキの事を書かれていたのを読んで、ふと思い出した。(愛国者として、ピアニストとして・・・ - ピアノのある生活、ピアノと歩む人生) それは映画『独裁者』のワンシーン。…

夢の続き または スマホ乗り換え奮闘記

半年ほど前に、息子と縄跳びをしていてスマホを落としてしまい、カメラ機能が駄目になってしまった。 それでも我慢して使っていたのだが、今度は1週間前に石の床に落としてディスプレイを割ってしまい、完全に壊してしまった。 シャープのスマホだったのだが…

なぜ楽譜通りに演奏しなければいけないか

息子が習っているメトード・ローズの曲にスラーが出てくるようになり、フレージングを守らせることを考えねばならなくなった。 なぜクラシック・ピアノは楽譜通りに演奏しなければいけないのか? もし息子に聞かれたら、こう答えるだろう。 「それは、あなた…

Amazonのプライムデー告知に思う

昔フワク 今ワクワクな 40歳年取ることの難しき現代

浅田真央さんの思い出

引退会見を、感慨深く見た。 妻がフィギュアスケートが好きで、結婚してから息子が生まれるまでの間、私もつられてテレビでよく見ていた。 浅田真央さんは、原曲がピアノの曲で演技するのを、多く見た気がする。 一番思い出深いのは、ラフマニノフの前奏曲op…

三谷幸喜の「新選組!」(NHK大河ドラマ)

3月末に、春休み中の息子と妻が妻の実家に帰省することになり、私にささやかな春休みが訪れた(土日限定だが)。 そこで、来し方を振り返ってみようと思い、以前の職場に勤めていた時に住んでいた町に旅行しようと思ったのだが、予算と天気の関係で断念した…

音楽史‐古楽との出会い

新年度から土曜の朝に息子が習い事に出かけることになった。そこで、新しくできた自由時間を、古い鍵盤音楽をピアノで演奏できる可能性の探索に使う事にした。今日はこの辺の個人的な考えを書いておきたい。子供の頃、クラシック音楽の世界にピアノから入っ…

ふたたび「風の谷のナウシカ」について

漫画版「風の谷のナウシカ」は魅力的な作品で、その放出する磁力に、私は定期的に引き付けられている。最近また考え直す機会があって、今度は何か水脈のようなものにぶつかったので、生温かいうちに書いておきたい。 発端は、初めて「教育勅語」を読んでみた…

「公共の福祉」に込められた思い

「公共の福祉」という言葉は(「教育勅語」という言葉共々)、ああ、そういえば受験勉強で出て来たよね~くらいにしか憶えていなかったのだが、ここ数日間、例の問題に興味をもって色々と調べたところ、そこに込められた先人の思いに気がついた。 私は「公共…

回想の3.11

その日私は、たまたま休暇を取っていた。 午前中に区内の図書館にCDを漁りに行き、お昼にはアパートに一旦帰宅した。しかし、その日に限ってなぜか、午後に隣の区の図書館まで歩いて出かけたくなった。 地震にあったのは、国道を歩いている時だった。 地面が…

今日の気づき

ツェルニーは、 どんなにがんばっても 決してクレイジーにはならない。 CZERNY ⇔ CRAZY

アルゲリッチの録音に聴かれる音

自分が書いたものを読み返していたのだが、"アルゲリッチは鍵盤を底まで弾かない"とだけ書くと、(このブログの想定読者である、私と同じくらいピアノ好きに成長した息子から)「底を弾いている音が聴こえるじゃないか」と反論が有りそうなので、補足してお…

ファツィオリの音が苦手

注目しているピアニストのCDが届いたのだが、よく見ると使用ピアノがファツィオリと書いてあってがっかりしている。 正直に告白すると、ファツィオリの音が苦手だ。 このピアノで録音されたCDから私が感じる音の印象は、このワイルさんのインタビューで述べ…

バックハウスと「風の谷のナウシカ」映画版に共通する豊かさについて

風の谷のナウシカに登場する人類は腐海の毒(カビ)に苦しんでいるが、実家に帰省した私はハウスダスト(カビ)に苦しんでいる。眠れない夜に、このふたつを結び付けてまとめておくというアイデアかぼうっと浮かんだので、忘れないうちに書いておきたい。昔…

永遠的なものの継承様式2

(続き) (7) ここで、具体例として私が人生の物事を考える上での最良の物差しであるピアノの話になる。 (8) エトヴィン・フィッシャーの「音楽観想」の中に、ポツダムでのマスターコースにおける速記録が収められており、バッハのBWV.911を語るシーンが出て…

永遠的なものの継承様式1

(1) アメリカ大統領選挙の結果を受けて、大変に驚いている。ブレグジットに引き続き、立て続けにテイルリスクが現実化してしまった感じだ。 (2) "テイルリスク"などという言葉を使うと、事前にどれくらいの可能性で現実化しえたものか"知っテイル"つもりにな…

強形式と弱形式

今日、職場で2階の変微分方程式の弱形式化の勉強(ようは有限要素法シミュレーションの勉強)をしていて、これが実に面白い。 強形式⇔弱形式の対比が、頻度主義⇔ベイズ主義と通底しており、ある種の双対関係を持っている気がしてならない。 最近足し算に興味…

基音と倍音

ロシア奏法を教えられているという先生のブログをたまたま発見し、大変勉強させて頂いた。 基音を聴かせるピアニストと倍音のそれとの違いを、私のしがない耳が捉えられているとしたら、いわゆる重戦車系(超絶技巧を録音した頃のベルマン、プロコフィエフの…

紀伊国屋にて

久しぶりに紀伊国屋書店による機会があり、音楽書のコーナーを見に行った。 先日亡くなった宇野功芳さんの追憶コーナーがあって、最近出版された本が何冊か並べられていた。 特に購入意欲をそそられる著作はなかったのだが(追憶で買うなら、もう少し古い著…