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メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

セレブリャコフのラフマニノフ:小品集(MANCHESTER)

(続き) 2枚目は、op.3の幻想小曲集、楽興の時、前奏曲集と音の絵から各数曲が、録音状態もまちまちに寄せ集められたラフマニノフ集。私がこの奏者の再現芸術家としての力量を決定的に確信したのは、こちらのCDであった。ヴィルトゥオーゾ作品での闊達さも…

セレブリャコフのショパン:葬送ソナタ他(MANCHESTER)

今年最大の発見は、このパーヴェル・セレブリャコフを初めて聴けた事であった。1枚目は、ベートーヴェンの熱情、ショパンの葬送ソナタにラフマニノフの2番ソナタというカップリング。見るからに強面のジャケット写真から、元祖の重戦車ピアニストではないか…

オスカー・ピーターソン:We Get Requests(Verve)

通常の音量(mpとmfの間の音量)を要求される急速なパッセージを、ノンペダルで弾いて尚且つ整った粒立ちの音を聴いた時、昔から「このピアニストは奏法の完成度が高い」と感じていた。 これがどうも、いわゆる合理的な脱力奏法を発展させた、鍵盤の底への衝…

プロコフィエフ:自作自演集(Naxos)

プロコフィエフに関する最大の誤解は(ひょっとすると誤解しているのは私のような世代だけかもしれないが)、その主要なピアノ作品が世界的に認知された時代が、ソ連の重戦車ピアニズム全盛期と重なってしまい、そういう弾かれ方をした録音が代表的な演奏に…

アファナシエフのモーツァルト:ソナタK.310,330,331(Sony)

アファナシエフは、K.310のソナタを前アルバムのK.457と同じくらいに我々にとって異形なものとして造形した。そしてK.330と331は、我々の知るものからそう遠くない位置に置いた。 つまるところ、このピアニストは自分の特異な芸風を誇示するために作品を利用…

非等拍系の作曲家

今朝ネットでハーフタッチについて検索していたところ、現代奏法を教えられているピアノ教室の非常に秀逸なページを見つけて、大変勉強させて頂いた。更に楽曲解説のところを覗いたところ、ショパンに関して、極力テンポを動かさないようにと書いてあり、現…

ジョン・キムラ・パーカーのショパン:ピアノ作品集(Telarc)

今年初めて録音を聴いたピアニストの中でも最大の発見のひとり。キムラ・パーカーは1959年生まれというが、1979年生まれですと紹介されて聴いても全く違和感がないほど最新のピアノ奏法でショパンを弾いている。それは鍵盤の底への衝突を極力回避したピアノ…

ブラームスの変奏曲op.21-1

E.フィッシャーの名演の感動さめやらぬ中、1時間かかって最後まで指を通した。感じたことを列挙すると、 ・明らかにベートーヴェンのソナタ30番と32番の変奏曲をもとにしている。 ・変奏曲といいながら練習曲を志向しているようなところがあり、小難しい。将…

E.フィッシャーのブラームス:op.21-1他(Music&Arts)

ブラームスのピアノ独奏曲でいちばん好きな作品は?と聞かれたら、現在の私はこのop.21-1の変奏曲と答える。後期ベートーヴェンの前に頭を下げて心から敬服している若きブラームス像が大好きなのだ(根っからのブラームスファンにとっては邪道かもしれない)…

ゲルナーのリスト:ソナタ他(CASCAVELLE)

リストのソナタを聴いて、最初の数分、近年でも出色の演奏に出会ったと思った。やがて、フォルテを弾いている時の音の鳴り方が妙なのが気になりだす。打鍵後に音が減衰するどころか、若干増加しているような…よほど特殊な残響のホールで採られたのかな!?や…

永遠的なものの継承様式3

(続き) (14) 内田先生の師弟関係の話の戻ろう。師が弟子の前で示す技芸や知見は、師に課された制約条件(これは、肉体的な条件であったり、文化的な背景であったり、色々と考えられる)のもとで、そういったものを超越する何かを表出しようとするために取…

永遠的なものの継承様式2

(続き) (7) ここで、具体例として私が人生の物事を考える上での最良の物差しであるピアノの話になる。 (8) エトヴィン・フィッシャーの「音楽観想」の中に、ポツダムでのマスターコースにおける速記録が収められており、バッハのBWV.911を語るシーンが出て…

永遠的なものの継承様式1

(1) アメリカ大統領選挙の結果を受けて、大変に驚いている。ブレグジットに引き続き、立て続けにテイルリスクが現実化してしまった感じだ。 (2) "テイルリスク"などという言葉を使うと、事前にどれくらいの可能性で現実化しえたものか"知っテイル"つもりにな…

ゾルタン・コチシュの訃報

急な話を受けて、心底驚いた。64歳、あまりにも早すぎる死である。 個人的には、この世代で最もメカニックの安定度が高く(ただし、その分音色の魅力が少ない)、そしてその事を微塵も感じさせないほど知性的な音楽をする奏者という印象だった。 思い出深い…

ジャニスのムソルグスキー:展覧会の絵(マーキュリー)

演奏は1958年のRCA盤と甲乙つけがたく、むしろ音の取られ方の違いのほうに注意が行ってしまう。 ジャニスは鍵盤のそこまでしっかり打ち込んだ強靭なタッチをする人だ(下部雑音=楽音という考え方だ)。私の耳にはマーキュリーの録音のほうが下部雑音を明確…

マガロフのムソルグスキー:展覧会の絵他(DISQUES MONTAIGNE)

2年くらい前に初めて聴いて"調子悪いライヴ"に分類していたのだが、今回聴き直してみて大いに印象が変わった。 録音に関する情報が一切記されていないのだが、おそらく80年代末の、モントルー音楽祭にまつわるライヴ又は放送録音のうちロシア物を集めた1枚で…

クライバーンのショパン:ピアノ作品集(RCA)

これまで避けていたクライバーンのスタジオ録音からいちばん有名なものを選んで聴いてみたが、これまた反省するところ大であった。 私はこの奏者を"第1回チャイコン優勝者"の肩書から(当時の)ソ連のピアニスト張りにブリリアントな芸風の持ち主と勝手に決…

ケフェレックのラヴェル:ピアノ独奏曲全集(Virgin)

以前図書館で選集を借りて聴いたことがあり、その時の印象と変わらなかった。 安定した技巧といい、タッチの音作りといい申し分ないのだが、ケフェレックは持ち前のセンスの良さで面白く聴かせることができる奏者であり、それゆえにラヴェルの場合にいささか…

ピアノの練習

…を書きたいのだが、例の遅いテンポ練習の影響で、「昨日と同じ内容」をかなりの頻度で繰り返し書かねばならない。 代わりに、昨今聴いたCDの感想を充実させようかと考えている。

アニー・フィッシャーのベートーヴェン:ソナタ全集(Hungaroton)

アニー・フィッシャーのBBCに録音したベートーヴェンのソナタ集を購入して聴いたのだが、Hungarotonに残した全集とそれほど異なる印象を残さなかったので、考えた事をまとめて書いておきたい。 私のベートーヴェン経験の一番のターニングポイントは、グリー…

マガロフのショパン:幻想曲、ロンドop.5、スケルツォ3番、24の前奏曲(fone)

初めてこのCDを買ったとき、まだ中学生だった。 このCDが盤面の劣化(歪み?)をおこしていて、前奏曲の後半でノイズが入るようになって困っていたところ、ゴールドCDで売られているのを見つけて記念に買い直した。 当時、ショパンの音楽を聴くのが大好きだ…

フィリップ=コラールのラヴェル:ピアノ曲全集

ネットで試聴した限りではタッチが骨太でラヴェルにあっていない印象を受けたのだが、たまたま二束三文で叩き売られていたので入手して聴いてみたところ印象が大違いで驚いた。ネット試聴だけでは誤ることがあると大いに反省し、世評の高い録音は一度聴いて…

ショパンの弾き方

比較的ハイフィンガーっぽい教わり方をしてきた私のような人間が、ショパンのピアニズムに慣れるまで、どうも2段階あるようだ。 (1) 伸ばした指で、重心移動 良く言及されている、奏法の違い。 しかしこれだけでは不十分で、 (2) 指を鍵盤の上にくっつけで脱…

いたたまれない話

結構歳のいった生徒がピアノの先生のもとで、これまでの奏法を一切白紙に戻して0から学び直しているという話を聞いて、いたたまれない気持ちになった。 歳のいったピアノ奏者なら、音楽と人生の体験をその従来奏法とともに経ているはずで、それをある時「一…

強形式と弱形式

今日、職場で2階の変微分方程式の弱形式化の勉強(ようは有限要素法シミュレーションの勉強)をしていて、これが実に面白い。 強形式⇔弱形式の対比が、頻度主義⇔ベイズ主義と通底しており、ある種の双対関係を持っている気がしてならない。 最近足し算に興味…

翼のはえた指_評伝 安川加寿子(青柳いづみこ)

読み手によって得られるものが異なる伝記だと思う。 私にとって一番心に残ったのは、完成された技巧を持った安川さんが、その速すぎる晩年に、リウマチによって演奏が出来なくなってしまうという、辛い残酷な事態であった。 ほとんどのピアノ弾きは、人生の…

ピアニストガイド(吉澤ヴィルヘルム)

本棚の奥にしまってあったのを、久しぶりに取り出してきてパラパラと読む。この本の最大の問題点は、著者主観を前面に出した人選ではなくて百科事典的に(CDで聴ける)ピアニストを網羅しているスタイルにもかかわらず、かなり目立つ位置に「おすすめ度」と…

ムラヴィンスキーのドイツ物が分からず

宇野功芳さんの追憶つながり(?)でムラヴィンスキーがメロディアに残したドイツ物(ベートーヴェンの3,5番とシューベルトの未完成)を立て続けに聴いたのだが、彼のロシア物の録音と比して、凄さがいまいち分からず。同じような演奏スタイルならトスカニー…

基音と倍音

ロシア奏法を教えられているという先生のブログをたまたま発見し、大変勉強させて頂いた。 基音を聴かせるピアニストと倍音のそれとの違いを、私のしがない耳が捉えられているとしたら、いわゆる重戦車系(超絶技巧を録音した頃のベルマン、プロコフィエフの…

ソビエトの名ピアニスト(ゲンナジー・ツイピン)

原著が1982年のため若干古さを感じさせる部分があるのだが、素晴らしかった。 最も心に残ったのはリヒテルについて述べられた箇所で、曰く❝芸術家が理性と感情を統合する時、通常なら冷静で均衡のとれた思考と熱烈な感情が統合されるところを、リヒテルの場…

紀伊国屋にて

久しぶりに紀伊国屋書店による機会があり、音楽書のコーナーを見に行った。 先日亡くなった宇野功芳さんの追憶コーナーがあって、最近出版された本が何冊か並べられていた。 特に購入意欲をそそられる著作はなかったのだが(追憶で買うなら、もう少し古い著…

名ピアニストたちとの出会い(山崎孝)

実店舗の本屋に行く機会がほとんどなくて、このような本が出版されているのを今まで知らなかった。 まだ第1章を読み終えたばかりなのだが、この本で目下一番素晴らしいと思ったのは、バックハウスの項で、奏者がしばしば聴かせる19世紀風の「様式化された非…

息子のクレヨンの絵本を読みながら…

(1) 息子の持っている12色入りのクレヨンを”リアル_クレヨン_セット”と名前を付けたとする。 (2) 12色の中から、黄色、マゼンダ、シアンを抜いた9色を、”シュワルツ_クレヨン_セット”と名前をつけたらどうだろう? (3) ”シュワルツ_クレヨン_セット”の任意の…

ピティナの提供音源のページ

気になるピアノの先生が、どんな演奏をしているのだろうと思ってググってみると… https://www.piano.or.jp/enc/pianists いとも簡単に聴き比べられてしまう!恐ろしい時代だ…。

最近出会ったblog

ピアノ漂流記 超絶技巧への迷走(http://pf-world.cocolog-nifty.com/blog/)というblogを見つけ、1週間くらいかけて全部読んだ。 著者のしんさんが罹っている右手の病気が、まるで過去の私の事が書かれているようで、驚いてしまった。 「左手は弾けるのに、…

ベーゼンドルファーで修行

近くにベーゼンドルファーを練習させてくれる場所があるのを見つけ、会社帰りに1時間ほど借りて練習した。 弾いた感じを列挙すると、 ・弱音が出しずらく、普段練習しているヤマハではまだ音が出るくらいのタッチで、もう音が出なくなってしまう。それゆえか…

クライネフのCHANT DU MONDE録音集

プロコフィエフのソナタ集の録音で聴かせるタッチが、後に聴いたプロコフィエフの自作自演のタッチに瓜二つであったのを目撃して以来、気のおけない奏者。仏CHANT DU MONDEへの録音集を、念願かなって聴くことができた。 クライネフは、演奏する作品が、書か…

ベートーヴェンの交響曲8番

リスト編曲のピアノ版スコアを見ながら1,4楽章を部分的に聴き比べる。 トスカニーニとクナッパーツブッシュが似ていると述べたら、暴論だろうか? この二人の演奏の共通点は、スフォルツァートやアクセントやスタッカートをすごく大事にして確固たる拍を作り…

指の支えの練習

ピアノを使わずに、テーブルの上などで指を支える練習をするとき、指を動かしながら支えたほうが効果が高い。 テーブルの上にタオルやハンカチなどの布をおき、その上に指を立たせる。そのまま指を動かして布を滑らせて前後左右に動かしたり、丸を描かせたり…

シュタットフェルトのバッハ:平均律第1集(Sony)

Sony classicalの売り込み方が好きではなくて敬遠していたのだが、完全に私の誤りだった。 デビュー盤のゴールトベルクから更に歩みを進めて、大変挑戦的なバッハ。古楽的なイントネーションに準拠した奏法の成果を踏まえたうえで、ロマンティックといえるよ…

トスカニーニに開眼

近所の図書館で、これまで聴いたことのない指揮者のCDをまとめて借りてきた。内容は、トスカニーニの「英雄」、C.クライバーの「運命」、チェリビダッケのブルックナーであったが、いちばん感銘を受けたのは、何とトスカニーニの「英雄」であった。 この演奏…

キートンの大列車追跡(The General)

電車好きの息子が、今日は機関車のDVDが見たいという。息子用のDVDコレクションには電車のものしかないため、仕方なく秘蔵の「キートンの大列車追跡」を出す。 この映画もキートンの他の映画と同様のドタバタコメディを、今度は機関車相手に繰り広げているよ…

ベルマンのリスト:ソナタとムソルグスキー:展覧会の絵(Amadeus)

イタリアのレーベルという事でどんな音質のものが届くかドキドキしながら待っていたのだが、ふたを開けてみれば後期のベルマンの録音としてErmitageとDISCOVERのライヴに並ぶ、音質・演奏ともに大変優れたレコードだった。 リストのソナタは75年のメロディア…

クナッパーツブッシュ/BPOのブルックナー:交響曲9番(1950.01.30)(MEMORIES)

息子に盤面を傷だらけにされても良いようにと、1962年の運命の入っている復刻盤を探していたところ、MEMORIESという復刻レーベルの交響曲選集が叩き売られているのを発見し、同じく叩き売られていたブルックナーの交響曲選集と抱き合わせで購入した(1963.01…

最近の運命

昨日は、息子がピアノ版が聴きたいと言い出したので、改めてグールド盤を持ってきて、提示部くらいまで聴く。 今日は、クナッパーツブッシュ/ヘッセン放送響の'62録音をもっていき、この3種類を提示部まで聴き比べた。グールドはともかく、フルトヴェングラ…

アンスネスのシューマン:子供の情景(EMI)

図書館に行ったついでに抱き合わせで借りてきたのだが、目から鱗のCDだった。 これまで私の中でアンスネスはVirgin classics時代のヤナーチェク(やショパン)での情熱的な覇気に圧倒され「こっ、これが若さというものか!」と感嘆したものだった。しかし、E…

ふとんで練習

最近で一番効いた練習がこれ。 くしゃくしゃになっても良いふとんや上着などを準備する(ある程度ふかふかなものが良い)。 手をいっぱいに広げて掴む。指の間にも布が挟まるくらいに。 親指をそらした状態で、残りの指を手のひら側に曲げこむのを、10回。 …

運命ふたたび

夕食後に、息子が再び「ジャジャジャジャーン」のCDをかけて欲しいと言ってきたので、またフルトヴェングラー/BPOで聴く。 今日は8分弱ある1楽章を終わりまで黙って聴き通し(しかし展開部で注意力が切れておもちゃをつついていた)、続きを聴きたがったが…

運命デビュー

朝、息子がキーボードで運命の主題のようなものを1本指奏法で弾いている。妻に聴くと、NHKの「みいつけた」で、運命の音楽を使ったCGを見て触発されたらしい。 「CD聴いてみる?」と尋ねたら「聴きたい」というので、同じくピアノで弾いているグールドのもの…

シゲティのバッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(Vanguard)

幾つかの曲を、シェリングの67年盤、メニューインの1回目の録音と比較しながら聴いた。シェリングやメニューインが素晴らしい演奏なのを重々承知のうえで、やはり格が違うと改めて思った。シゲティの演奏を聴いていると、なぜか教会の中で聴いているような錯…