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メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

ベートーヴェンと和解

後期弦楽四重奏曲をどうしても触ってみる必要があると思い、ピアノ編曲版に指を通してみたところ、後期作品特有の慈愛の光があふれてきて、私のこれまでの悩みが氷解した。

 

結局、ベートーヴェンは「第9」や後期ソナタ集で獲得した世界を最後まで維持していて(正確に言うと、やや肩の力を抜いており、op.126のバガテルやディアベリ変奏曲に近い)、弦楽四重奏というフォーマットがゆえに私がそれを聴覚できなかっただけなのだ。

 

私にとってベートーヴェンの作品群は(バッハと比して)❝宗教なき近代人が如何にして彼岸の世界を知覚しえるか❞に答える、ひとりの人間の歩みに思える(この切り口で捉えれらない面が多々あるのを承知のうえで、こういう演奏をしたときに作品が一番偉大に聴こえると言い切りたい)。

ディアベリ変奏曲が、あの平凡な主題が紆余曲折を経てop.111のアリエッタと同じ光の中に消えるこの作品こそ、彼の自画像に思える。