メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

ピリスのモーツァルトとショパン問題(1)

【CDコレクションの未解決問題 No.12】

今回いろいろ聴き直して、改めて凄いピアニストだと思った。

ソロ録音を、時期別に以下のように分けている。

(1) もぎたてレモン期(~70年代末に休養に入るまで)

宇野功芳さんが「もぎたてのレモンのような新鮮さと生硬さ」とたとえていた。

(2) 表現主義期(録音復帰~DGへのシューベルト即興曲集まで)

一変して、作品への共感を前面に出し掘り下げた造形を聴かせる。

(3) 最円熟期(DGへのベートーヴェンソナタ集から)

端正な造形の中に深い内容を表出、初期の清楚さを回復。

 

モーツァルトピアノソナタ全集(Denon'74)

・〃:〃(DG'89-90)

どちらのモーツァルトが好きかと言ったら、Denon盤だ。ただ今回聴き直して、どうしてもDG盤を外せないと思った。新録音の特徴は、モーツァルトソナタが含むドイツ・ロマン派の萌芽のようなものをモーツァルトの語法をぎりぎり守りながら全面的に拡大して見せたような演奏で、大変情緒豊かで、かつ重い。そしてこの特徴は、同時期の内田光子さんの全集がバッサリそぎ落としてしまった要素だと感じる。この新全集と(反対方向にヘビーな)内田さんの全集を並べて聴くのが大変面白く、これが旧全集では釣り合いが取れないのである。