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メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

ピリスのモーツァルトとショパン問題(3)

そのほかの録音について、簡単に考えをまとめる。

まずは表現主義期の盤。

・バッハ:パルティータ1番、イギリス組曲3番、フランス組曲2番(DG’95)

パルティータ1番はノクターンと同じく重いが、イギリス組曲3番では堅牢な楽曲が情念をがっしりと受け止め、フランス組曲2番では小ぶりな曲に合わせてピリスが距離を保っていてちょうど良い具合。

シューマン:森の情景、アラベスク他(DG'94)

曲との距離感が理想的にとれていて、ドイツ精神主義楽派(ケンプやフィッシャー)の演奏スタイルを見事に継承していて感動的。

シューベルトソナタD.784、楽興の時(DG'89)

シューベルトでは独墺系のスタイルからさらに踏み込んだ独自の表現を聴かせるピリス。D.784のソナタでは掘り下げた表現主義的な演奏が、この作品に全く相応しい。楽興の時では一変して小ぶりな作品を優しく包み込む。

シューベルト即興曲集D.899,935,946他(DG'96,97)

この期のピリスの最高傑作で、この曲集の盤の中でも屈指の演奏だと思う。すぐ後ろに死が忍び寄っているシューベルトのすべての思い(怒り、憔悴、諦観、甘美さ、etc.)が乗り移った感。