メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

ジャニスのムソルグスキー:展覧会の絵(RCA)

1958年のRCAへの録音。若い頃のジャニスの録音を初めて聴いのだが、関節炎を悪化させる前のステレオ録音が、ほとんど協奏曲しかないのが残念に思うくらい良い演奏だった。

音楽的にもメカニックに頼った一本調子なものでは決してなく「真摯な」という言葉が一番合う。

だが何より特徴的なのは、プロムナードの主題などの旋律を単音で弾いた箇所で特に感じるのだが、「耳障り」の3歩手前まで近接するかのようなコクのある強音を、強靭な個々の指によってひき出していることだ。

当時のソ連の重戦車系のピアニスが腕全体の重みが乗った分厚い和音の塊を繰り出すのに対して、同時期アメリカを代表するこの奏者の場合には、個別の指の強靭さに支えられた音の集まりで勝負する。

これはあたかも、全体主義v.s.個人主義という、録音当時の米ソのイデオロギー対立構造までもが、この「展覧会の絵」からは透けて見えるようだ。

これを専門用語で「そら絵事」と呼ぶ。