メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

ファーガス=トンプソンのラヴェル:ピアノ曲全集1(ASV)

ファーガス=トンプソンがASVに纏まって録音したものの中では、その希少性の高さからスクリャービン集に真っ先に手が出てしまうのだが、ドビュッシーと、このラヴェルの全集によって語られる奏者であることを確信した。

ソノリティのコントロールにかけてはトップを行くピアニストであり、曲の感じ方を前面に出す演奏なので、ドビュッシーが素晴らしくラヴェルは弾きすぎになると、このCDを聴くまでは思っていた。事実、重すぎると感じる部分もいくつかあるのだが、聴後感として最上級のラヴェルになっている。これはすごい事だ。

ひとつ啓示をうけた事がある。ピアニストがこれほど自分の感じ方を前面に出して尚もラヴェルを聴かせるのは、作曲家の音楽の中にある決定的な要素を射抜いているからで、それはおそらく「孤独感」だと思った。

(全集2に続く)