メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

マルディロシアンのバッハ:編曲集

昔、レコード芸術で推薦されていたのを覚えていて、再プレスされたタイミングで買ってみたのだが、これは良かった。

マルディロシアンのピアノは、この体格の奏者が往々にして持ち合わせる豊かでよく響くタッチを持っているが、細やかに抑制されたペダリングで清潔なフォルテを鳴らす。以前に聴いたリストのCDではそれがネックになって音楽が小ぢんまりしたスケールに纏まってしまい物足りなさを覚えたが、ヘンデルやこのバッハ等のバロック物では、その特徴が逆にいきていると思った。表現主義とは真逆の、淡々とした運びで演奏を進めていくのだが、そのタッチの存在感によって、ずっしりと音楽が浮かび上がってくる。