メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

ケナーのラヴェル:ピアノ作品集(オーマガトキ)

楽しみに買ってきたケナーのショパンのCDがいまいちで、ショックで倒れる。替わりに、昔買ったラヴェルのCDを取り出して聴いたのだが、こちらのほうが面白い。

これはダン・タイ・ソンショパンを聴いた時にも感じる事なのだが、彼らのショパンはテキストにあまりにも忠実な(原点主義の時代の尾をひいた一昔前の)演奏で、奏者固有の面白みを欠くきらいがある。一方彼らがラヴェルを弾いた場合には、作曲家に対する距離の取り方が最適であり、しかもそのショパン弾きとして磨かれたピアニズムのミスマッチが「個性」として輝くという、まことに面白い状況が起こる。

ケナーのラヴェルで一番の聴きどころは、正当なフランス系ラヴェル弾きの最弱音(コツンという感じの音)よりも一回り小さい最弱音(音にならないくらいの音)をパレットの中に持っていることで、アメリカの奏者であるという予備知識も手伝って、どことなくジャズっぽい響きのラヴェルになっている。