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メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

シュタットフェルトのバッハ:平均律第1集(Sony)

Sony classicalの売り込み方が好きではなくて敬遠していたのだが、完全に私の誤りだった。

デビュー盤のゴールトベルクから更に歩みを進めて、大変挑戦的なバッハ。古楽的なイントネーションに準拠した奏法の成果を踏まえたうえで、ロマンティックといえるような演奏の刷新の可能性に全ピアニズムをかけている。私の好きなフェルナーやシェプキンのように古楽的奏法の枠の中で古き良きロマン的な感じ方をも両立させるやり方ではなくて、完全に螺旋を描いた寄り戻し。この行き方は大変に危険で懐古趣味と紙一重なのだが、ここに聴く限り、新しい可能性を想像しえたのではないか。

グールドが、伝統から見て辺境のカナダ出身だったからこそあのバッハを成しえたのとまったく対極に、シュタットフェルトは、ど真ん中のドイツ生まれだからこそ、このように弾けるのではないかと思った。伝統的な感じ方が刷り込まれているからこそ、楽想によっては確信をもって古楽奏法から逸脱できるのではないか。