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メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

フィリップ=コラールのラヴェル:ピアノ曲全集

ネットで試聴した限りではタッチが骨太でラヴェルにあっていない印象を受けたのだが、たまたま二束三文で叩き売られていたので入手して聴いてみたところ印象が大違いで驚いた。ネット試聴だけでは誤ることがあると大いに反省し、世評の高い録音は一度聴いてみるものだとつくづく思った。

さて録音で聴くフィリップ=コラールに関していうと、取り上げられた作品の"録音史"に精通した解釈を示すという印象が一番強いピアニストである。このラヴェル全集は、おそらく尊敬しているであろう先輩のフランソワとまったく同じ音響で録るようにEMIスタッフにお願いしたのではないかと類推してしまうほどそっくりの音で録られていて驚いた。もっとも完全に猿まねになっているかというとそうではなく、フランソワが無視した音楽記号をきちんと守ったりしており、現在私のさらっている洋上の小舟の例でいうと、4ページ目くらいからffまで盛り上がった後にちゃんとディクレッシェンドしており、更には同箇所の入りはじめ(pp en dehors)をアルペジオではなく左手の和音進行を聴かせながら盛り上げていくあたりは、多分ペルルミュテルの演奏解釈を取り入れている。

この盤を聴いていて、ラヴェルといえばフランソワ盤で刷り込まれた私には、あたかも高校の時に好きだった女の子の双子の妹とばったり知り会ってしまったかのような、嬉しくもあり尚且つ微妙に複雑な心境になった。

このピアニストの録音は、おそらく聴き比べオタク専用アイテムである。