メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

マガロフのショパン:幻想曲、ロンドop.5、スケルツォ3番、24の前奏曲(fone)

初めてこのCDを買ったとき、まだ中学生だった。

このCDが盤面の劣化(歪み?)をおこしていて、前奏曲の後半でノイズが入るようになって困っていたところ、ゴールドCDで売られているのを見つけて記念に買い直した。

当時、ショパンの音楽を聴くのが大好きだった私は、世にショパン作品全集なるセットがあることも知らず、未知の作品の入っているCDを集めており、ロンドop.5が聴けるので入手した。しかし私は、冒頭に入っている幻想曲の演奏に完全に魅了されてしまった。だが手元にある名盤推薦本には「マガロフ」というピアニストの名前は一切見られない…という、ケンプの場合と同じような状況で出会った奏者だった。

そして私も馬齢を重ねて少しはものを知るようになり、最晩年のライヴ録音などで明らかにできの悪い録音が多くあるにもかかわらず、この世代で最も完成された奏法を持つピアニストだという確信のようなものを持っていた(ホロヴィッツリヒテルを差し置いて!)。ショパンの全集に含まれるエチュードは言うに及ばず、リストのパガニーニ練習曲のタッチの粒立ちの良さ、亡くなる直前の録音とは信じがたいスクリャービンの練習曲全集etc.etc.

この考えが腑に落ちたのは本当に最近、ロシア奏法を教えられているピアノの先生の、奏法に関する文章を読んだ時である。これは具体的に検証したわけではなくて私の類推なのだが、マガロフは鍵盤の底ではなくハンマーの動作ポイントを狙う奏法で弾いているのである。