メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

クライバーンのショパン:ピアノ作品集(RCA)

これまで避けていたクライバーンのスタジオ録音からいちばん有名なものを選んで聴いてみたが、これまた反省するところ大であった。

私はこの奏者を"第1回チャイコン優勝者"の肩書から(当時の)ソ連のピアニスト張りにブリリアントな芸風の持ち主と勝手に決めつけていたが(事実ライヴ録音を聴くとその通りなのだが)、それだけはない見事な側面をまざまざと見せつけられた。それはop.62-1の夜想曲や「別れの曲」で見せるリリシストとしての素質の高さで、クライバーンはこれらの曲を、彼の一世代前の名人たちと比べると音色の抑制された弱音で弾き通すのだが、そこに、この時代の第一線の音楽家の幾人かが共通認識として持ち合わせていたように思える「氷づけの数歩手前の"静謐な"抒情美」(←これが機械的に精密無比な急流楽章と対立命題を成すという演奏様式が、時代のトレンドとしてあったような気がする)を、感じるところである。