メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

オスカー・ピーターソン:We Get Requests(Verve)

通常の音量(mpとmfの間の音量)を要求される急速なパッセージを、ノンペダルで弾いて尚且つ整った粒立ちの音を聴いた時、昔から「このピアニストは奏法の完成度が高い」と感じていた。

これがどうも、いわゆる合理的な脱力奏法を発展させた、鍵盤の底への衝突を極力回避した奏法をとっていることが重要な要素になっていると認識したのは、今年に入ってからの事である。

ここから先は大分私の勘が入るが、この奏法を積極的にとる弾き手は、全体的に小さめの絶対音量で弾くのと、下部雑音の発生が控えられるために、通常の音量をノンペダルで弾いた時の単音の中にさえ倍音が豊かに含まれており、ある楽句を急速に弾いた時に非常に豊かな響きを発することができて、これを私が粒立ちの良い音と認識するようなのだ。

(実は弱音の音が美しいピアニストは奏法を問わず沢山いて(例えばブレンデルを聴くとそう感じる)、私は単純に音の美しさだけでは区別することができない)。

さて、私は熱心なジャズピアノの聴き手ではないのだが、オスカー・ピーターソンの弾くCORCOVADOを聴くと、速いパッセージで正にこの粒立ちが驚異的で、奏法の完成度の高さに驚かされる。テンポの速いGOODBYE D.J.では、リズムの柱をつくる音はしっかりバシッと深く弾いて、細かい音はパラパラっと弾いている。

クラシック作品を弾いても、さぞかし上手かったに違いない。