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メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

田所政人さんの「あるピアニストの一生」

ひと月ほど前、「あるピアニストの一生」から引用したとされる難易度28段階表を発見して、次に譜読みする作品を決めるのに重宝させて頂いていた。

ただしこの表の欠点は近現代の作品が少ない事で、例えばスクリャービンソナタアルベニスのイベリアはどの程度なのだろう?と常々思っていた。

ところが今日、本家本元の「あるピアニストの一生」をのぞいたところ、表に記載されていたのは氷山の一角であることを知った。

ここにはスクリャービンソナタやイベリアはもちろん、クープランからカプースチンに至る、私が認知する古今の名曲のうち約8割以上が掲載され、難易度28段階で分類されて、しかもお薦め度が付いている。さらに田所さんの射程は、私は楽譜屋さんで背表紙しか見たことがないような何十冊ものピアノ教材や子供向け曲集、日本人作曲家、チックコリアのチルドレンズ・ソング、坂本龍一の「エナジー・フロー」にまで及び、その全てを1回以上指を通して判定している。これは専門書籍2-3冊分に相当する偉業だと思う。

実際この手の難易度分類表として私がこれまで参照してきたのは春秋社の「ピアノ・レパートリー辞典」で、古今の名曲が15段階表示されているのだが、これと比較したとき田所さんの分類の特徴は1曲1曲の分類が細かいところである。例えば春秋社のではショパンの練習曲27曲がまとめて難易度12-15となっているのに対して、田所さんのでは27曲すべてに個別に難易度が記されており、私などの弾き手が次にどれを読もうか考えた時に、非常に実用的なつくりになっている。

この教材研究を今日1日かけて一通り見たのだが、とても1回で汲み尽くせるものでは無く、定期的に再訪して都度新しい知見を頂く事になると思う(なので、こういう内容のものは、やはり蔵書として本棚に持っておきたい)。

今回私が心から感銘を受けたのは、まずカプースチンの曲集を評して「私などが偉そうに評価を下せるような作曲家ではない」大物とまで言っているところ。そしてチャイコフスキーシュトラウスに匹敵するワルツの大家と言い切り、さらに新ウィーン楽派ピアノ曲で歴史の風雪に耐えうるのはベルクのop.1だけだとも述べられている。これは大変重い言葉だ。

そして今回教えて頂いた最大の発見は、モシュコフスキーの最高傑作はスペイン奇想曲で、イベリアに匹敵するという。これは全くのノーマークであった。さっそく聴いてみたい。