メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

いい音ってなんだろう(村上輝久)

実はこの本に先立って、川崎市で行われた講演録+インタビューと思しき本を読んだ。内容的には結構被るところもあるのだが、おおいに楽しみながら読むことができた。

個人的に興味深かったのは、1967年のマントン音楽祭の調律を一手に引き受けてやっている様子をドイツの音楽評論家が新聞に記事を載せて村上さんが一躍脚光を浴びるのだが、この音楽評論がほぼ前文に近い形で訳されていて、その中にケンプがフランスでは30年ぶりにシューマンの謝肉祭を演奏して、それを同じくこの音楽祭に出演しているフランソワ、リヒテルとギレリスが聴きに行ったというくだりだ。

ケンプはフランソワとは深い親交があったようで、またケンプの自伝にはギレリス父娘とケンプ夫妻で一緒に写っている写真が掲載されているのだが、リヒテルとはどの程度面識があったのだろう?

この本で一番感動的な個所は、ピアノを前にしてジョルジュ・シフラの両脇に、村上さんともうひとり、文中には"辻君"としか書いていないが、世界的に著名な辻文明さんが3人並んで調整の相談をしている写真である(245ページ)。