メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

サン=サーンスの自作自演集(APR)

"The piano G&Ts"というシリーズのvol.3で、ショーンバーグの「ピアノ音楽の巨匠たち」に記載のあるサン=サーンスの1904年と1919年の自作自演を聴く事ができる。

1919年の録音時、作曲家は83歳であったはずだが、運指に加齢による衰えはおろか苦労の後さえも一切感じられず、大変に驚いた。録音で聴くサン=サーンスのタッチの印象は、同じフランスの歴史的ピアニストの例でいうと、エドゥアルド・リスレを少し細くしたような感じである。

収録曲のうちop.104のワルツは、よほどお気に入りなのか、この1904年と1919年の2回の録音の他に、ピアノロールに残した演奏が少なくとも2つある。1つ目は1905年にウェルテ・ミニョン社に残したもので、他のロールとともにStainwayを使ってTacetが復刻。2つ目は1915年にエオリアン社に残した演奏の内のひとつと思われ、コンドンコレクションとしてBellaphon=DENONヤマハのC7を使って復刻している。

今回改めて同一曲を実際の録音とピアノロールで比較したところ、ピアノロールの方はどちらの演奏も速い運指が必要な場所で弾き崩しているように聴こえる箇所が散見されるのだが、録音を聴くと全くそんな事はない(特に1919年のは録音技術の進歩により細部の音の粒まではっきりと聴こえ、奇跡的な若さを保った指回りを感じる事ができる)。やはりここらへんがピアノロールによる限界のようだ。