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メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

サバテールのモンポウ:歌と踊り1-12番(Picap)

スペインにサバテールという名手がいるという話を、随分昔に記憶していた(手元にある「200CDピアノとピアニスト」は1996年の初版だが、南欧のピアニストというページに名前が載っている。しかし私はこの本以前にどこかでこの名に出会っていた気がする)。

しかしながら、この奏者のCDを売り場で一切見かけた事が無く、私にとって幻の演奏家であり続け、名前はいつしか記憶の片隅に置き去りにされていた。

そんな最近、表題のCDを見つけたのは、ついこの間のこと。ラローチャの弾くモンポウの旧録音をAmazonで試聴していた時にたまたま出てきて、これはあのサバテールの録音ではないか!と衝動買いしてしまった。

いそいでネットで調べると、ローザ・サバテールは1929年生まれ。伝説のピアニストというよりもはるかに最近の奏者だが、1983年のアビアンカ航空機墜落事故で若くして亡くなっている。

一方、ここで演奏されているモンポウの「歌と踊り」は、彼の前奏曲集と並んで、いつか全曲指を通してみたいと思っている傑作集だが、私の聴経験はそれほど多くなくて、これまで全曲盤に近い形で聴いたのは作曲者自身のステレオ盤、ラローチャの最後の録音、ゴンサロ・ソリアーノの1-8番のモノラル録音しかない。

さて、ここに聴くサバテールのモノラル録音は、一聴してまずタッチの粒立ちの良さが耳を捕らえ、前述のうち誰に近いかと言えば間違いなくラローチャに似ている。両者の違いだが、サバテール盤は、まずモノラルという事もあり主旋律のタッチの粒が伴奏部と比して際立っているのと、踊りに当たる後半部でより一層情緒豊かに音楽を動かす事(しかしこれは、ラローチャがモノラル期に録音していたら同じ様になっていた気もする)、そして何より、和声進行に対する感度が一層きめ細やかであるように感じた。

なお、このCDがもたらしたもうひとつの巡り合いは、サバテールの早すぎる晩年まで師事していたと思しき日本人ピアニスト、領家幸さんという方が書かれた長編のblogを発見した事であった(領家さんは、残念ながら2013年ごろに亡くなられたようだ)。