メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

反田恭平さんのリスト:ピアノ作品集(日本コロムビア)

人気急騰中の反田さんによるリストの CDを、ようやく図書館で借りる事ができた(2ヶ月以上かかった)。

聴いた印象は、ネットで試聴した時と大きく変わらない。

楽器がきしむほどに強烈な打鍵、ピアノが悲鳴をあげる3歩手前の爆音は、まるでラザール・ベルマンの再来だ。これこそ"ロシア奏法"ならぬ"ソ連奏法"で、かつて一世を風靡した弾き方である。

私の学生だった頃、それは、まだポリーニの超絶技巧神話が健在で、若手と言えばポゴレリッチ、ツィマーマンやプレトニョフ、そしてキーシンは神童、ブーニンは新進と言う時代であったが、大きな爆音は、速くまわる指と並んでアマチュアのピアノ弾きにとってステータスであり、プロコフィエフソナタは煙をあげる感じでバリバリ弾くものだと信じられていた…。
反田さんのピアノを聴いていて、そんな昔の思い出が走馬灯のように駆け巡った。

最近の奏者でこういう弾き方をする人は、ほとんど居なくなってしまった(わずかに、ARTE NOVAにプロコフィエフを録音したドミトリエフがこのタイプであろう)。
現代奏法の先生は顔をしかめるかも知れないが、こういう弾き方のピアニストが何人か残っている方が、私のようないちピアノファンにとっては、奏法(文化)の多様性の維持という観点で好ましい。
これは保つのに非凡な才能と努力を要するピアニズムだろうが、反田さんにはこの弾き方による魅力を維持していって欲しいと思った。