メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

トリオ・カンパネッラによるアルベニス:イベリア(ギター三重奏版)(NAXOS)

去年の12月末から、本を読む感覚で、興味あるピアノ曲の譜読みを始めた。
少しでも若さがあるうちにと、いちばん譜読みが難しそうな作品から始めたのだが、最も苦戦したのはアルベニスのラバピエスとレーガーのバッハ変奏曲であった(幾つかの現代音楽はこれらより難易度が高そうだが、目下読む予定はない)。

アルベニスの「イベリア」の中でも最高に難解とされるラバピエスは、最初から最後まで臨時記号と密集音塊の嵐であり、楽譜通りに左右の手で音を取るべきかどうかを殆ど1小節ごとに止まって考え込むという、まさに苦行であった。

CDで聴いてみても、ラロ-チャやアムランの演奏でさえ、ひたすら音が多くてごちゃごちゃした印象である。「イベリア」には好きな曲が結構あるのだが、この曲に限っては、果たして名曲かどうか考え直そうか…というのが、正直な感想であった。

ところが、そんな私のラバピエス感を激変させる衝撃のCDを聴いた。
それがこのギター・トリオ版である。

演奏者を苦しめるごてごての音塊が3つのギターに分割されるとあら不思議、倒錯した疑似ポリフォニーのような各ラインは見事に整理されて風通しが良くなり、ピアニストが弾いた時の困難さからくる鬼気迫る感は一切取り払われた結果、作者の指定する「陽気で自由な」盛り場の雰囲気が、まるで蘇った古代遺跡のように見事に立ち現れるのだ。

私はこのギターでの演奏によって初めて、アルベニスがこの曲に込めた音楽を聴く事ができた。

ラバピエスに挑戦される方は、絶対に聴いてみた方が良い。そして私は、このギター版にあふれ出る音楽を取りこぼさずにピアノに"再編曲"する弾き方を模索するのが良いとさえ、思ってしまう。

ともあれ、私のピアノ人生に決定的な影響を与えた1枚であった。