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メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

クラウスのモーツァルト:ソナタ選集(コロムビア)

クラウスのモーツァルトソナタ全集の旧録音でM&A盤に出会う前のこと、新星堂盤で聴いて録音に大いに不満だった私は、同じ時期(1950年頃)にVoxに録れたソナタ選集があると知って飛びついた。それがこのコロムビアによる復刻版で、ソナタK.310,331,332,576及び幾つかの小品に加えてハイドンのHobⅩⅥ-37が含まれる。

しかし意外な事に、ここに聴くクラウスの演奏は、録音こそ問題を感じないモノラル録音だが、ピアニストは本当に同一人物かと一瞬疑ってしまうほどに表現が大人しい。クラウスはこの後僅か4~5年で前述の旧全集を録音するのだか、この選集と旧全集の間に横たわる距離感は、旧全集と新全集のそれより遥かに大きい。

昔、小石忠男さんが「世界の名ピアニスト」の中で、表現主義的な弾き方をするようになったクラウスが、戦前にゴールドベルクとデュオをやっていた頃からは想像もつかなかった、と言うようなことを書いていたが、その事を思い出させる録音であった。