メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

私が人生で出会ったもの・考えたこと

ピアノ音楽の源流探索2017~スグリッツィに敬意を表して

イタリア・バロックの鍵盤音楽にはいる前に、この鍵盤奏者に1ページを割きたい。

スグリッツィは1910年に生まれ、1994年に没したイタリアの演奏家である。ピリオド楽器の開祖レオンハルトが1928年生まれだから相当に昔の人なのだが、ピリオド楽器時代の名チェンバリスト達でさえ手が回らなかったイタリア・バロックの鍵盤音楽に関して、貴重な録音を遺している。

・18世紀ヴェネチアチェンバロ音楽
(プラッティ、ペシェッティ、ガルッピ、B.マルチェロにアルベルティの作品選集)

・パラディエスソナタ選集

・A.スカルラッティトッカータ選集

チマローザソナタ選集

・更に、18世紀イベリアの鍵盤音楽集(ソレール、デ・ネブラのソナタの他、セイシャスを1曲)

これらの音源は、私にとって貴重な道標となった。

私は常々思うのだが、我々が例えばベートーヴェン交響曲を聴いてみようと思ったときに、"運命"とか"合唱"とかがすっと出てくるのは、過去何世紀にも渡って幾人もの音楽家が 人生を掛けてこれらの作品に光を当ててきたからである。

だが、これが例えばB.マルチェロソナタを聴いてみようと思ったときは、真っ白の雪原に放り出されたようなものだ。どの曲から作曲者の世界に入っていけば良いのか、てんで迷ってしまうだろう。

そんな時、我々はこのスグリッツィ盤に"相談"する事ができる。

先達が光を当て続けてきた作曲家の作品に、人生をかけて新たな角度から光を当てるのも演奏家の仕事だ。しかしまた、忘却の淵に瀕した作品に人生を賭して光を当てるのも、演奏家にとって偉大な仕事である。