メメント・モリ、あるいはピアノにかんするエトセトラ

あるピアノ愛好家が人生で出会ったもの・考えたこと

ヴラディゲロフのシュメンop.29を聴いて考え込んでしまった

ギレリスが若い頃(1950年)に抜粋で録音したのを聴いて以来、とても気になっていた曲集だったのだが、今回ドイツのANTESというレーベルにPopovというピアニストが全曲を録音しているのを見つけて買ってみた。

しかし私は、この全曲演奏を聴きながら、"最初にこの演奏で出会っていたら、果たしてこの曲集を気に留めていただろうか?"と真剣に考え込んでしまった。
決して悪い演奏ではないのだが、ギレリスに比べて何かが弱い。

それは、合理的なテクニックとか、楽譜に忠実な解釈とかではなくて、もっと根本的な何かだ。
現在のパラダイムで傑作と見なされていない作品が、その人が弾く事によって印象が激変するような、再現芸術家としての"強度"のようなもの。